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梅田で働く不動産屋の日記
塩井の失敗談58 ~不動産営業マンのロードマップ!!~
2025-09-08
こんにちは、バイリンクの塩井です。
先日とある他社の営業マンとランチに行ったのですが、そこで「そういえば塩井さんて以前はどこで働かれていたのですか」という質問をいただき、この話題が意外と盛り上がりました。
僕のブログを見ていただいている方は大体同業の営業マンだと思いますが、これから不動産業界に飛び込む若者や転職を考えている方には面白い話題になるかなと思いこのテーマを今回はピックアップしました。
さて、まず不動産営業といっても実はかなり多くのジャンルに分かれています。多くの方が想像するのが駅前にある賃貸屋さんでしょうか。初対面の方に「不動産の営業をしています」と話すとほぼこの駅前の賃貸屋さんと勘違いされます。それくらい不動産屋=賃貸物件を探して案内してくれる人というイメージが世間に浸透しているということでしょうね。
もちろんこの賃貸物件を探してくれる営業さんも不動産営業です。次に売買ですね。これも駅前の路面店のイメージが強いのではないでしょうか。大手財閥系から電鉄系、銀行系など一度はCMで目にしたことがあると思います。
この駅前や好立地の場所で路面店を出しているところは大体不動産仲介と呼ばれる職種です。実需、つまり実際に住むために不動産を買いたい、借りたい人に向けて商売をしています。
基本的に自社では物件を保有しておらず、仲介という立場で売主と買主、貸主と借主のマッチングを行い、成約すれば手数料をいただく商売です。この仲介ひとつを深堀しても売主側に強い仲介会社、買主側に強い仲介会社と分かれます。更に深堀すると実需向けか、収益向けかにも分かれます。大体大手は売主(売却したいお客様)に強く、中小や地場業者は買主(不動産を買いたいお客様)に強いイメージがありますね。
次に売主(事業主)と言われる立場の不動産営業マンもいます。バイリンクの営業マンはここに該当します。主に物件を自社で保有しており、販売する物件は自社の物件です。扱う商材が自社物件か他人の物件かというところに事業主と仲介での大きな違いがあります。仲介営業マンは手数料で稼ぐという話をしましたが、事業主は自社の物件を販売する為、中古なら仕入れ金額と販売価格の差額、新築なら土地の仕入れ値と建築費が原価となり販売価格との差額が利益となります。
この事業主も中古メインか新築メインかで分かれており、さらに新築・中古の中でも区分マンション、戸建て、店舗、一棟収益マンション、一棟ビルなど多岐に渡ります。全て扱う総合不動産みたいな会社もありますが、ほぼ9割の不動産会社は何かしらに特化しています。
長々と書きましたがここから更に街づくり規模のデベロッパー、管理会社、貸しビル業者、物上げ業者、地上げ業者、ワンルーム業者、サブリース業者と書ききれないくらいのジャンルがあります。
ここからが本題ですが、もしこれを見ている不動産業界に興味のある方は不動産業界でどうなっていきたいかというビジョンがまずは大切かもしれません。
とりあえず高学歴かつピカピカの経歴で、他の業界も興味があるけど何となく不動産に魅力を感じているくらいなら大家業メインの会社がおすすめです。ヒューリックや地主といった不動産を保有してその賃料収入で稼いでいる会社です。分かりやすく言うと個人レベルではなく法人として事業レベルでスケールしている大規模な大家さんですね。基本こういった会社は入社難易度は非常に高いですが、ホワイトで高給取りのエリートサラリーマンになれます。相当高い能力とトップクラスの学歴、そして運も必要ですが。
次にスケールの大きい仕事をチームでやりたいという方は大手デベロッパーがおすすめです。三菱地所、三井不動産、住友不動産、東急不動産、森ビルといった大規模開発をメイン事業にしている会社です。不動産を通じて社会に大きな影響を与えたいみたいな願望がある方には向いているのではないでしょうか。ここも同じくかなりのスペックと学歴が必要です。
そして最後に僕が個人的にもっともおすすめしたいのが、中小、零細クラスの不動産仲介会社です。ここに飛び込む方は正直かなりの覚悟と根性が必要です。責任は持てません。しかし、何者でもないやつが何者かになれる、そんな夢が詰まった場所がここです。安定や世間体、ホワイト、そんなことを少しでも気にする人は悪いことは言いませんのでやめた方が良いです。
でもそれでも成り上がりたい、稼ぎたい、自分のスキルを上げてどこでもやっていける能力を身に付けたい、そんなアグレッシブな人が自分のビジョンを実現するにはこの上ない環境です。
ここで「おいおいお前おすすめしてるけど仲介ちゃうやんけ」というツッコミが入りそうですが、タイトルにあるように不動産業界で効率良くのし上がっていく為には順序も大切だということです。
その成り上がりストーリーの登竜門が中小、零細、地場の不動産仲介ということです。もちろん器用にどこからスタートしても稼いでいる営業マンは一定数いますが、僕の経験上その会社では稼げているという印象です。もしくは他所に行っても稼げるが基礎が疎かで攻撃力はあるけど守備力がゼロに近い営業も多いです。デカい数字は上げるけど取引でのトラブルも多いタイプですね。
何が言いたいかというと仲介が不動産の基礎基本を学べる場ということです。ここをすっ飛ばしていきなり企業体力のある事業主の会社に入社し稼げてしまった営業はどこか自分がすごいと勘違いする人が多いです。そりゃ稼ぐだけなら事業主の方が稼げます。ただ、まずこの業界で売り物が安定してあるというのがどれだけ恵まれていることか、これは仲介をやらないと本当の意味では分からないと思います。
ここで僕の話をしようと思います。僕は新卒でとある不動産仲介会社に飛び込みました。実需メインの会社で、ポータルサイトに掲載した物件のお問い合わせをきっかけにお客様に物件を提案し、成約すれば仲介手数料をいただくという仕事をしていました。
ここだけ聞くと反響営業やん、楽そうと思われるかもしれませんが、先程ご説明した通り仲介には自社物件がありません。ではポータルサイトに何を掲載するのとなりますよね。そうです、ポータルサイトに掲載する物件をとにかく足で集めるんです。手段は問いません。ポスティング、テレアポ、飛び込み、とにかく不動産を売りたい人を見つけて販売を任せてもらう。ここが出来ないと何も始まりません。
もう少し詳細に説明すると、他社が販売活動をしている物件を掲載することも出来るのですが大体質が悪いです。当たり前の話ですが、どこの仲介会社も売り物を血眼になって毎日探しています。そんな中で、やっと売主様に売却を任せてもらった物件の広告を他社の営業マンに許可しますか。しないですよね。なので、大体広告オッケーの物件は長期で売れていないどうしようもない物件です。大手建売業者、買取再販業者の販売物件を掲載するケースもありますが、これはどこの仲介会社も掲載出来るのであまり反響が芳しくありません。ポータルサイトで同じ物件が色んな業者から出ているのはこういうのが理由です。
なので、仲介で数字を上げようと思うと、いかに自分だけが扱える物件を引っ張ってくるかにかかっているのです。当時はまだピチピチの20代で体力もあったので、夜中の2時まで毎日売却チラシのポスティングに行っていました。僕に限らず同期入社のやつら全員そんな感じでしたね。
大体撒き終わると近くの深夜までやっている中華料理屋に集まって今日は何枚撒いたみたいな話やどうでもいいアホな話をして3時に帰るという生活を続けていました。もちろん次の日は新人なので7時には出社しなければいけないので、毎日睡魔との闘いでした。あまりにも睡眠時間が短かったのでハーバーランドの交差点で居眠り運転し、赤信号で突っ込んで事故ったのも懐かしいです(人は引いてません)。
ちなみに僕がもっともやってやったとしたり顔で語れる案件は、同業他社のチラシが絶対に入らない12月31日の大みそかにポスティングに行き、次の日年賀状を取りにポストを開けるのを見越して撒いたチラシが見事ヒットして年明けすぐ媒介契約を結び、客付けまで2週間で完了させた案件です。この年はポスティングのカシャカシャという音が僕にとっての紅白歌合戦でした。実は今でもチラシを撒くのはめちゃくちゃ早くて、この前須磨の案件で久しぶりにポスティングしましたが、一緒に行った神戸支店の奥村くんにドン引きされました。
この時は年収で言うと500~600万ぐらいだったような気がします。
次に転職した会社は地場の建売業者です。親会社が仕込んで商品化してくれた物件をポータルサイトに掲載し、その自社物件をメインに販売していくという仕事です。正直感動しましたね。売り物があるだけでこんなにも稼ぐのが楽になるのかと。自社物件はもちろん自社でしか広告をしませんので、月の反響数も安定していますし、別にその物件しか売ってはいけないわけではないので、案内して気に入ってもらえなければ他社がレインズに掲載している物件を提案することが出来るので、正直前職で泥のような営業をしていた僕からすると楽勝でした。年収もここで1,000万にすこし届かないくらいまでの水準に到達したのを覚えています。
つまり何が言いたいかというと仲介は地力が付くということです。それは数字を上げる為に入口から出口まで全て経験できるからです。売主メインの会社ではこれは身に付かないですし、販売だけでなく仕入れからやらせてもらえる会社でもあくまでそれは会社の膨大な資金と銀行融資を引っ張れる信用があるから仕入れができるんです。あなた自身は何もすごくないんです。その会社や代表の力で稼がせてもらっているということです。明日会社が無くなればあなたは稼いでいるやり手の営業マンではなくただの人になります。
正直稼ぎたいだけならそういう会社にいきなり入った方が良いかもしれません。でも本当の意味でプロの不動産営業マンとして大成していきたいなら順序は大切です。プロのサッカー選手でもいきなり海外には行きません。まあ最近はチラホラ高卒でいきなり海外に行く人もいますが、基本的にはJリーグで基礎を学び、次にオランダやベルギー、そして4大リーグとキャリアアップしていきます。
不動産営業マンも同じだと僕は感じています。もし僕が今18歳に戻り一から不動産業界に飛び込むなら、大学はすっ飛ばして高卒で賃貸仲介(実需、テナント系両方)、22歳から売買仲介、25歳から建売か実需の買取再販、28歳から収益、事業系というロードマップを組みます。この後は独立するか、その会社で出世を目指すかの二択になるかと思います。
人それぞれ「いやこのルートの方がベストだろう」とあると思いますが、僕の拙い不動産経験ではありますがこれがベストだと言えます。実需特化でいくのでも、収益特化でいくのでも良いかと思いますが、僕は実需の営業を何十年もやれる想像が付かなかったので収益、事業用の畑に転職しましたが特化するのもありかもしれません。
ただ体力的には仲介、事業主問わず実需の方が圧倒的にキツイです。「おっさんになっても脳筋パワーでバリバリやれるで」と自信のある方は良いと思いますが頭を使って稼いでいく方向性も視野に入れるなら収益や事業用も触れる環境に上手くシフトするのが賢い選択だと思います。
久しぶりに長々と書きましたが、同業が見ても、不動産業界に興味がある方が見ても読みごたえのある内容になったのではないでしょうか。
賛否あるかと思いますが、これが僕が描く最高の不動産営業マンのロードマップです。
偉そうに語っていますが、僕自身まだまだ道半ばの半人前営業マンです。この業界に魅了されて一心不乱に走ってきましたが、まだまだ夢半ばです。たくさんの営業マンが毎年参入し、それ以上の人が退場していく、そんな強烈な世界ではありますが、そこで気張って闘い続ける営業マンは皆ライバルであり仲間だとも僕は感じています。そしてそんな気合が入った人たちがたくさんいるこの世界が僕は大好きです。
ある意味この業界は夢追い人の集団とも言えるかもしれません。ダーティーなイメージも強い業界ですが、何者でもないやつらが身一つで何者かになろうと日々奮闘するような実はすごく魅力的な業界なんだとまた別なブログで書ければ面白いかなと思います。
長くなりましたがここまでお読みいただきありがとうございました。