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事業用建物賃貸借契約における注意点〜工事区分編

 
物件管理
2024-09-02

今回は工事区分の話です。原状回復や転貸借と同じ位トラブルが多いトピックなのですが、あまり注目されていない事が多いので余計に注意が必要な分野だと私は思います。

これはいわゆるA工事、B工事、C工事の話なのですが、まずは簡単におさらいしておきます。

A工事 家主指定の業者で家主負担の工事
B工事 家主指定の業者でテナント負担の工事
C工事 テナント指定の業者でテナント負担の工事

一般的にA工事はビルの躯体や全体の設備等に関わる工事、B工事はビルの躯体や全体の設備に関わるけども、テナント側の業種業態やデザイン等、テナント側の都合で行う工事、C工事は専有区画の内装工事等が多いです。

契約書の特約に、どこからどこまでがA工事でどこからどこまでがB工事、と具体的に明記されていれば良いのですが、私が見る限りほとんどの賃貸借契約書でその境目が曖昧です。

よくあるケースとしては、電気、ガス、水道と防災関連設備です。防災設備というのは火災報知器やスプリンクラー、消火栓等、主に消防法に関連する設備の事を言います。
電気やガスは敷地内の引込みは家主負担で、そこから専有区画内での配線や配管はテナント負担というのが一般的です。防災関連設備はいわゆる一次側工事と言われている、ビル全体に関わる消火栓ボックス、火災報知器の受信機等、設備の基になる装置は家主側で工事する事が多い様です。

まぁここまでは割とわかりやすい話ですので契約書に記載されている事もあるのですが、では電気の配電盤やブレーカーの設置はどちら負担なのか?という事や、水道やガスは敷地内まで来ているけど、敷地内から専有区画内までの引込みはどちら負担なのか?もっと言えば一次側工事とは具体的に言うとどこからどこまでなのか?等、細かい部分でよくトラブルになります。

また、防災関連設備の場合は一次側工事は家主負担で対応する認識だったとしても、例えば一棟貸しの場合で、家主は完全に現状有姿で引渡しをする条件で認識しているかもしれませんが、細かい法律の話をすると、消防法に基づいて建物を維持管理する義務は家主にもありますので、工事費用はテナント負担にするにしても消防署への届出はどちらがするのか?提出する書類の作成は誰がやるのか?等、実は決めないといけない事が沢山あるのです。

防災関連設備は何も取り決めが無ければ、消防法上、家主の義務に当たる部分は家主負担という事で良いと思いますが、一棟貸しの場合に借主と貸主の認識にギャップが生じるケースがありますので、注意が必要です。

工事区分や責任と負担の取り決めは物件や案件によってケースバイケースになる事が多いので、ここでハッキリした正解をお伝えしにくい問題ではあるのですが、唯一言える事は、特約は細かければ細かいほど良いと考えて良いと思います。また、具体的であればあるほど良いです。とにかく、取り決めが無いというのが問題なのです。

契約前に気付いて取り決め出来れば良いですが、契約後に不備に気付いた場合はお互いに無傷ではいられません。高額な損害賠償や訴訟費用が発生するケースもありますし、仲介業者も責任を問われるでしょう。
ご用心。

 

 
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